転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜
260 当たり前の事って意外と気が付かないんだよ
僕が抽出しなかったらポーションができないって聞いてしょんぼりしちゃったロルフさんとバーリマンさん。
でもね、しょんぼりしちゃったのはロルフさんだけじゃなくって僕もなんだ。
「どうしたのですか? ルディーン様」
そんな僕を見て、ストールさんが心配そうに聞いてきたんだよね。
だから僕、教えてあげたんだよ。
「だってさ、せっかくうまく抽出で来たって喜んでたのに、意味なかったんだもん」
「意味がないとは?」
「だってさ、僕が抽出したのでバーリマンさんが作ったのはダメなんでしょ? だったら意味ないじゃないか! だって僕、お肌つるつるポーション、作れるもん」
僕が抽出したのをバーリマンさんが使ったらダメなんだよね?
だったらその抽出したのを使っていいのは僕だけって事になるんだけど、そんなの使わなくったってお肌つるつるポーションを作れるんだよ?
なら、やっぱり僕が抽出できるようになったのなんて意味ないじゃないか。
僕がそう言うと、ストールさんは大慌て。
「そっ、そんな事はありません。他の誰もなす事ができない事をやってのけたのですから、そうですよね、旦那様」
意味がないなんて事、無いよって言いながら、ストールさんはロルフさんにそうだよね? って聞いたんだよ。
そしたらロルフさんも、うんうんって頷いたんだ。
「なんで? だって僕が抽出したのを使ってお肌つるつるポーションを作るの、ダメなんでしょ?」
だけど、やっぱり意味ないんじゃないかなぁ? って思った僕は、ロルフさんになんで? って聞いてみたんだ。
そしたらロルフさんはちょっと考えてから、こう言ったんだ。
「確かに先ほどルディーン君が抽出した事自体にはあまり意味はないかもしれぬ。じゃがな、君が抽出した3つの薬効によって肌用のポーションが作れると解った事には大きな意味があるんじゃ」
今までお肌をつるつるにするポーションは僕が作ったのしかなかったんだって。
だからどんな薬効が効くのか誰も見つけられなかったのに、それを抽出してポーションにしたらちゃんとお肌がつるつるになるんだって解った事がとっても大事なんだってさ。
「君が作った肌用ポーションの効果は確かに絶大じゃ。しかしそれは君にしか作る事が出来ぬ。じゃが、この3つの薬効成分を組み合わせる事によって劣化版とは言え肌用ポーションが作れると解った今、これらの成分を含んだ薬草を探し出すことで多くの者が肌用ポーションを作り出せる可能性が出てきたのじゃ」
「そうですよ、ルディーン君。君が抽出してサンプルを用意してくれれば、鑑定解析のスキルがなくとも錬金術の解析だけでその成分が含まれているかどうかわかるもの。だから君がやった事には意味があるのよ」
でね、バーリマンさんも一緒になって意味があるんだよって教えてくれたもんだから、僕はやって良かったんだってやっと思えたんだ。
僕が元気になったのを見てロルフさんたちはほっとした顔になったんだけど、またすぐにしょぼんってしちゃったんだ。
「しかし、ルディーン君が抽出したものを使えぬとなると、本当に必要な成分を含んだ植物を探し出せるまでこの研究は中断する事になってしまうのぉ」
「そうですわね。肌用ポーションには他に7つの成分がありますから、それを抽出してもらって組み合わせを試してみる事もできますが、すでに今ある3つで効果が出ているのですからあまり意味がありませんし」
せっかくここまでやったのに、今すぐできる事が何にも無くなっちゃったんだよね。
だから今日のけんきゅはこれで終わりだねって雰囲気になってたんだけど、
「あの、よろしいですか?」
「何かありましたかな? カルーフェルトさん」
「はい、何を馬鹿な事をと笑われるかもしれませんが、どうしても気になった事がありまして」
その時お母さんの一言で、状況が大きく変わる事になっちゃったんだ。
「ルディーンが作ったポーションに水を混ぜても使えたのは、グランリルの川の水に魔力が含まれていたからなんですよね? ならセリアナの実の油に、何か魔力を含んだものを混ぜたらだめなのですか?」
お母さんは、魔力が足んないなら魔力がある物を混ぜたらポーションになるんじゃないの? って思ったんだって。
でも、それを聞いたロルフさんたちが黙り込んじゃったもんだから、お母さんは大慌て。
「あっ、忘れてください。そうですよね。そんな素人が考えつくような事でうまく行くはずが……」
すぐに今言った事は無し! ってお母さんは言おうとしたんだよ。
「なるほど、これは盲点じゃった」
「そうですわね。初めから多くの薬効を含んだ材料を使っているために、さらに別の材料を混ぜて使うと言う考えにいたりませんでしたわ」
でもロルフさんたちが急にこんなことを言い出したもんだから、お母さんはびっくりしちゃったんだ。
「えっと、それでは?」
「うむ。カールフェルトさんが仰る通り、他の薬草を混ぜる事で魔力の総量の底上げは可能じゃ。まぁ、組み合わせによっては肌に及ぼす効果が薄れてしまうかもしれぬから、混ぜる物は慎重に選ばねばならぬがな」
ポーションって、一つの薬草から作るだけじゃなくって、いくつかの薬草をいっぺんに鍋に入れて煮出した汁を使って作る事もあるんだって。
だからお母さんが言った、他のを混ぜるって言うのはみんな普通にやってるんだってさ。
「そう言えば髪の毛つやつやポーションもセリアナの実の油に卵とはちみつ、入れて作ってるもん。だから混ぜて作っても大丈夫だね」
「それはさらに薬効を増やしておるのであって……いや、確かにその通りなのじゃが」
でね、僕が髪の毛つやつやポーションも、別のを混ぜて作ってるって言ったら、ロルフさんがちょっと困った顔になっちゃった。
だからなんでだろう? って思ったんだけど、
「ポーションで複数の素材を使う場合、普通は足りないものを他の薬草で補う事で効果を上げるために混ぜるのよ。でも、ルディーン君が作った髪の毛のポーションは足りないものではなく、加えることでさらに別の効果をもたらしたのだから正確には別のものだとロルフさんは言いたかったのよ」
そしたらバーリマンさんが、似てるけどその二つは全然別なんだよって教えてくれたんだ。
「よく解んないや」
でもね、その違いがよく解んなかった僕は頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらバーリマンさんが、錬金術を勉強してればいつかは解るから大丈夫だよって。
「今はよく解らなくても、違うものなんだって事さえ覚えていればいつかかならず理解できる日が来るから、今は頭の片隅にでも置いておくといいですよ」
「うん、解った! 僕、覚えとくね」
そう元気にお返事した僕の頭を、バーリマンさんはニコニコしながらなでてくれたんだ。
思った以上に話が進まなくて、研究の話が次回まで続いてしまいました。
本当は今回で終わるはずだったんだけどなぁ。
と言うわけで、次回こそ、本当に研究の話は終わりです。
じゃないとせっかくイーノックカウに来たのに、遊ぶ話がいつまでたっても書けませんからねw